神への挑戦

目の前で倒れている組員が半殺しでやられている状態だと考えると、初老の男は銀次の言葉に悪寒を感じずにいられなかった。一割だけ生かされる暴力…。

それは死んだほうがマシだと思うような拷問を意味する。両腕を折られれ、両足を折られても人間はそう簡単に死ぬ事はない…。歯、鼻、アバラ、顎、膝、肩…これらの全ての骨は許容範囲。

初老の男は、極道という体裁を無視し、この地獄から逃げようとリビングの入り口に走って逃げようとした。だがリビングを出たそこには、信じられない光景が待っていた…。

「うわぁっ!?」

リビングのドアを開けたそこには、自分より一回り大きい男が、リビングを出たすぐの所に立っていた。

190cmに届きそうな身長にスキンヘッドの頭。頭の即頭部にはドラゴンの刺青が描かれえており、ドラゴンの尻尾の部分は首元にも達している。服を着ていても解るぐらいに筋肉隆々の体は、トップアスリートと言っても良いぐらいの体格をしている。

そんな男に行く手を阻まれた初老の男は、思わず後ずさる。だが後ずさったそこに居るのは、先ほどの惨劇を演出した舞台俳優…。

「逃がすかよっ。カーテンコールにはまだ早いぜ…」

銀次が待ち構えていた。

ドラゴンはリビング内に入ると、目の前の光景を見て、思わず驚いた表情をする。

「これはまずいでしょう銀次さん…やりすぎだって」

流石のドラゴンもこの惨状を前に、そう言わざるを得なかった。

「…俺の仲間に手を出す奴が悪い。これでも抑えた方だ…まぁこれからがおっさんにとってのクライマックスなるけどな」

「それクライの意味が違うでしょ…そう言えばランやジャックって人は無事なんすか?」

ここに来た目的を思い出したドラゴンは、リビングの奥の方に居るランとジャックに視線を送る。そして、駆け足で二人に駆けつけると、ランの容態を確認した。

「大丈夫かランっ!?…大丈夫ではないようだな」

ドラゴンはランの容態を見てすぐに、ランが重症である事に気づく。左手の指は全て折られており、右手も小指を折れている。散々殴られたのであろう顔は、所々切り傷の様な腫れ方をしており、明らかに拷問をした後の怪我だ。