足を踏み入れたその場所は、最高級の家具が立ち並ぶ豪華な部屋だった。大きさは20畳ぐらいはありそうなその部屋に、重々しい空気が流れている。

そして、一番奥の一際大きい窓ガラスがある手前に、ぐったりしているランがおり、その近くには屈強な男がこちらに視線を送っている。

「ランっ!」

ランの容体が気になったジャックは、ランの所に行こうと一歩足を踏み出したのだが、先ほどの三人が行く手を阻んだ。

「動くな。怪我をしたくはないだろう?」

手にドスを携えた状態で、刃先をジャックの方に向けている。その刀身を見たジャックは驚いた様子で動きを止める。

「その男はまだ客人だ。それはしまっておけ…」

リビングのソファーに腰を下している初老の男が、ドスを持った男に指示を飛ばす。男は軽く頭を下げ返事を返すと、ジャックに向けていたドスを下ろし、一歩後ろに下がる。

「俺もこれ以上、若い青年に手荒なまねをさせたくない。ジャックさんもそうだよな?」

ソファーに座っている男は一度ランに視線を送った後、ジャックに視線を送りそう話す。ジャックはランの容体が気になり、冷静に男の話に耳を傾けれる状況ではなかったものの、軽く頷く。

「それじゃ要件に入ろう。お前達は何故、睡蓮会の情報を調べているんだ?」

やはりと言うところか…。ジャックは内心そうと解っていたものの、自分達の過ちを後悔せざるおえなかった。

睡蓮会はエースや銀次ほどの男が一度、手を引いた連中なんだ。簡単に情報が手に入る訳がない…。

なのに簡単に手に入った。理由は一つ…ジャックやランは相手の手の平で踊らされていたのだ。あえて情報を流し、その上で監視を続け、俺達の行動を見張っていた。

そして何かが切っ掛けになり、こういった大胆な行動を開始する事になったのだ。それは間違いなく、ミストに関係している。

先ほどの椎名製薬工業襲撃事件。間違いなく、それらの事件がこの事態に発展した要因に入っている。