男達の一人が後ろにある高級車を指差すと、後部座席のドアを開ける。ジャックは自分の置かれている境遇を肌に感じながら、その後部座席の中に入って行った。

間違いなくこの3人は堅気ではない。下品に笑うチンピラは置いといても、他の二人は身に纏っている空気が違う。適度に礼節をわきまえているところも見ると、上下関係が厳しい環境に身を置いているのは間違いない。

(…まずいな。エースとは連絡が取れてないし…俺一人で何とかするしかないか)

内心かなりヒヤヒヤしているジャックを乗せた車は、駐車場から車を出すと、とある場所に向かって走り出した。




ジャックを乗せた車は、都心にあるとあるマンションの地下駐車場に到着した。車から降りたジャックは3人の男に先導され、エレベーターに乗り込み、最上階にある一画に案内された。

そのフロアに入った瞬間、ジャックは自分の置かれている境遇をしっかりと感じ取っていた。このマンション…というよりも、この一画は全て相手のフィールドであると言う事。

マンションなので、部屋などはたくさんあるものの、このフロアの異様な雰囲気を見る限りでは、間違いなくここの住人はジャックを先導している仲間しかいないのは間違いなかった。

どれだけの兵隊が居るのか…このフロアには、ざっと見ても30人ぐらいの人間がジャックの到着を待っていた。皆一様にサラリーマンの様な風貌ではなく、体格の良いチンピラが小奇麗なスーツを着ている様にしか見えない。

息が詰まる様な空気の中、3人の男の一人がジャックに話しかける。

「いきなりのお出迎えで驚かせたかな。だが、こちらも少し切羽詰まっている状況なので、多めに見てくれ」

切羽が詰まっている…。どうやらこの男達は何かの目的があって、ジャックをここに連れてきたのは間違いない。そして、どんな経緯でランがこの場所に連れて来られたのか…。

解らない事ばかりだが、この状況ははっきり言ってかなりピンチだ。ジャックは武闘派ではないので、ケンカは決して強くない。それなりの身長はあるものの、これだけの人数を相手に立ち回れるほど実力がある訳ではなかった。

かなりの不安を抱えながらジャックは、3人の男が案内する部屋に足を踏み入れた。