神への挑戦

ハヤトの場合は、愛する人を守れるだけの力に対する固執が人より多いという事。つまりは、自分が本当の意味で強さを手に入れ、絶対に守り切る覚悟を決めるまで、自分の道を進むという点だ。

ヒサジは未熟なままでも良いから、彼女を守りたいと思うタイプで、ハヤトは彼女の事よりも、自分の仕事を優先にしてしまうタイプなのだ。

「俺もそう思った。形はどうあれ、サヨが俺の闘っている姿を安心して見ていられるぐらい強くなろうと思ったんだよ。そしてサヨ自身、暴力に対する恐怖を克服してもらいたくて、今はボクシングをやっているってところだよ…」

ヒサジはまっすぐな気持ちでサヨと向き合っていた。それは傍目から見れば、異常なまでの愛情に感じるかもしれない…。

だがそれが、ヒサジという男でありヒサジが生きて行く上での生きる意味にも繋がっているのだ。

「なるほどな。でも、ボクシングの世界は、そんな気持ちで上に上がれるほど簡単な競技じゃないだろ?ヒサジはどこを目指して、ボクシングをしているんだ?」

今度は、ハヤトの質問に即答でヒサジは答える。

「目指す…か。あくまで俺の目標は、サヨの病気を治す手助けをする事だよハヤト。それ以下でもそれ以上でもないさ」

「そうか…お前らしいよヒサジ」

窓際の席で座っていた二人は、仲好く手を繋ぎながら店に近寄ってくるサヨとマリコの様子を見ながら、そう話した。







閉会式が終わったのだが、ヒサジの雑誌取材などの時間があり、二人は試合会場のロビーでヒサジの到着を待っていた。

この後は、ヒサジの祝勝会も兼ねて夕食を食べに行く予定だった。

次々と会場を後にする人ゴミを視線に捉えながら、ヒサジの到着を待っていると、ハヤトの携帯に着信があった。

ハヤトは着信相手を確認した後、少し二人から離れると、電話の着信ボタンを押す。

「随分と久しぶりだなシン。何か用か?」

着信相手は、ホワイトのリーダーであるシンだった。ハヤトはマリコとサヨを視界に収められる位置に立ち、二人の様子を見ながら電話をしていた。