神への挑戦

精神疾患は本人の自覚症状だけで判断しないといけない病気だ。

サヨの症状もそうで、本人が隠そうと努力した場合、肉体的な怪我などに比べ、他の人の眼を欺きやすい病気と言える。

サヨの性格上、ヒサジに心配をかけまいと懸命に努力して、良くなったという印象をヒサジに与えたかったに違いなかった。

「…薬で精神を落ち着かせる事は出来ても、完治をさせる事は出来ないんだよ。俺はこの3年でその事をイヤと言うほど思い知らされた」

3年間の年月はかなり長い月日だ。サヨが暴行にあった日から考えると、5年近い年月は経っている…。

精神疾患は月日が解決してくれるものではないのかもしれない。

「でも俺は、サヨの病気を少しでも早く治してやりたい。サヨには苦しい思いはさせたくないし、泣いている姿なんて見たくないんだ…」

「…その気持ちは俺にも解るぜ。確かに、泣いている姿は一番堪えるからな」

ハヤトとヒサジは共通点が多い二人だ。ケンカを得意とし、ある意味不器用な性格。

プライドが高いからこそ、一人の女を愛し、浮気などを考える事など決してしない人種。

だが決定的に違うところが一つだけあった。

「サヨの病気を本当に克服させる方法…それは俺が本当に強くなる事だと思うんだよ。俺が肉体的に強い人間で、昔の様な事など絶対に起きないとサヨに思ってもらえれば、心配されなくなると思うんだ」

それは、彼女に対する『愛し方』だ。ヒサジは形振り構わず、彼女の為に尽くすタイプの男だ。

彼女の幸せを一番に考え、それを叶える為に全力を尽くせるのがヒサジ。

「少し安直過ぎる気もするが…でも的は得ていると俺も思うぜ。サヨちゃんの身に起きた出来事の一つ一つを解決する事が、病気を治す一番の近道だと思うしな。それに、サヨちゃん自身も過去の追体験を克服する為の強さを手に入れないといけないしよ」