神への挑戦

審査をする人間も、戦いを熟知した人たちだし、当然ボクシングが好きな人間。

総合的に見ても、誰が一番輝いていたかは一目瞭然だった。

会場に残っていた人たちが注目する中、閉会式は進み、ついにMVPの発表の時間になる。そして発表された。

「やったぁっ!ヒサジ君が、MVPだって!」

「うんっ!凄いねっ!」

ハヤトの考え通り、今回の新人王トーナメントのMVPはヒサジに決まった。会場からは多くの拍手がヒサジに送られ、ヒサジもその拍手に応える様に、リングの上から会場に居た人たちに軽く会釈を返す。

ハヤトの隣ではしゃいでいるマリコとサヨは、ヒサジに向かって大きく手を振り、その姿を視界にとらえたヒサジは、少し嬉しそうな表情でこちらの様子を見ていた。

(ヒサジも立派な堅気だな。羨ましくもあるし、嬉しくもある…複雑な気分だ)

目の前で人々に祝福され、それに応えるヒサジ。ハヤトの人生の中で、誰かに祝福されたり、賞賛を得る事など今まで一度もなかった。

不良という人種であるハヤトは、そういう願望が今までなかっただが、目の前で輝いているかつての不良仲間を見ると、少しはそういう事を考えてしまう…。

闇の住人かた光の住人に変わった親友。夢や希望を与える事が出来る、数少ない人間にヒサジがなった事は、ハヤトの中で嬉しさ反面、悔しさも覚える出来事だった。

(でもまぁ…やっぱり、嬉しい気持ちの方が強いかな。ヒサジが、大切な人を守る為の一つの決断なんだからなボクシングは)

試合前にした、ヒサジとの会話をハヤトは思い出し、表情を穏やかのものに変えた。





「ヒサジがボクシングのプロか…少し意外だな」

試合の計量も前日に終えていたヒサジは、試合前の昼食を兼ねて、ハヤトと二人でランチを取っていた。

マリコとサヨは二人で買い物に出かけ、それが終わった後、店で合流する事になっているので、今は二人きりである。

「やっぱりハヤトもそう思うか?俺もボクシングだけは、やらないと思っていたからな」

「ヒサジのケンカのスタイルは、ボクシングとは相性が良くない感じだったからな。どちらかと言ったら、総合格闘技向きのスタイル…キックボクシングの方が、向いている感じだしな」