「長い話になりますし、座りながら話しましょう。飲み物もお出ししますよ」

カウンターの中に入ったカツミは笑顔でそう話すと、目の前の席に腕を差し出し、二人を案内しようとする。

「…解った。お言葉に甘えるとしよう」

エースは厳しい表情を崩すことなくそう言うと、カウンターの座席に腰をおろした。銀次はそんなエースの様子を見ると、同じように隣の座席に腰をおろした。

カツミはその姿を確認すると、冷蔵庫から市販のコーヒーのペットボトルを取り出し、三人分のドリンクを用意すると、目の前に差し出す。

「最初に言っておきますが、このコーヒーには何も入っていませんから安心して下さい。俺も同じコーヒーを飲みますし…」

そう言うとカツミは、二人よりも先にコーヒーに口をつけた。そのカツミの姿を見たエースと銀次だったが、目の前のコーヒーには手をつけない。

「別に喉は乾いていないから、気にしなくて良いよ。早く話を聞かせてくれるかな?」

「意外とせっかちですね。別の俺は逃げも隠れもしませんよ…逃げるぐらいならあなた方を待ってたりしませんし」

カツミはそう言うと、人数分の灰皿を用意すると自分のタバコに火をつけ出した。

「灰皿は必要ですよね?取りあえず置いときます…それでは話を始めましょうか。何処から話せば良いのやら…」

「ミストの目的を教えろ」

黙って話を聞いていた銀次だったが、奥歯に詰まるような口調のカツミが我慢出来ないのか、少し苛立った様子で話しかけた。

「ミストの目的ですか?それはもちろん、睡蓮会を潰す事ですよ…ご察しの通りね」

「…睡蓮会の事をどこで知ったんだ?」

今度はエースが落ち着いた様子でカツミに質問する。

「シンジって男に聞きました。始めは儲かる仕事と言われて、麻薬の密売を手伝っていたんですが、後にシンジから睡蓮会の事を聞きまして、シンジのしようとしている事に賛同したんですよ」