「話に聞いていたのと感じが違うね。もっと粗暴な感じを想像してたんだけどさ…」

ライブハウスで一人、エースや銀次達の到着を待っていたのだというカツミは、あまり抑揚を感じさせない雰囲気で二人に話しかけていた。

エースはそんなカツミを見て、素朴な質問を投げかける。

「そうですね。『ハヤト』の前では、粗暴って表現が一番適切な雰囲気で話かけていましたから、そう感じるのも無理はないですね」

「ハヤトか…どうやら、こちらの事はお見通しだったと言いた気だな」

カツミの口から出た『ハヤト』という言葉が、何よりもエースの言葉の意味を雄弁に語っていた。

「もちろん知ってましたよ。ですが貴方は、それほど驚いていない様子ですが…予想の範疇でしたか?」

「まぁね。ミストにジャッジタウンの出身者が関わっている以上、銀次やハヤトの顔が割れていてもおかしくないかと思っただけさ…まぁ、そんな事はどうでも良いんだけどね」

そう話すとエースは、その場でしゃがみ込むと足元に隠していた、カランビットを取り出し、グリップエンドに小指をはめた。

そしてそのまま前にカランビットを突き出すと、視線を鋭くさせる…。

「ミストに関して知っている情報を全て話せ。素直に話せば痛い思いはしないで済む…」

この時のエースの眼は、明かに本気の眼だった。冗談などを言っている雰囲気は皆無で、恐らくは抵抗すれば、間違いなくナイフで切りつける気でいる…。

そして隣でこの様子を眺めている銀次は、そんなエースを止める気は一切なさそうだった。

「良いですよ。もう隠す必要はなくなりますしね…」

カツミは、笑いながらそう話すと、ライブハウス内のカウンターの方に歩きだす。