神への挑戦

最初に仕掛けたのは相手選手だ。ラッシュをかけるかの様に間合いを詰め、攻撃に転じていた。

しっかりと顔面をガードしながら突き進む姿はまるで、甲冑を着た騎士の様で、強固な守りと一撃必殺の槍を構えた姿に似ていた。相手もそれなりにキャリアを積んでいる選手なので、打ち合いなら負けないと踏んだのだろう。

先ほど同様に、ヒサジがこの攻撃を捌き、距離を取って戦うと会場に居るほとんどの客は思ったに違いない。だが、そんな予想をよそにヒサジは先ほどの戦い方とは違い戦法を見せる。

「構えをとった。インファイトをするつもりか?」

ヒサジは距離を取ることなく、相手選手と向き合い、打ち合いを挑んだ。

相手のパンチがボディーに入る前に、鋭いジャブで牽制をする。そのパンチの軌道は直線的で、目の前でさらにパンチが伸びる不思議な感覚を相手に与えるジャブだ。

相手の選手はヒサジのジャブをガード越しに受け、少し動きを止める。すかさずヒサジは上下の揺さぶりを交えながら、的確にボディーの隙間を縫って、パンチを入れた。

体重を込めた一撃ではなかったので、相手はそれほどダメージを受けた訳ではなかった。だが、先ほどまでの動きとまるで違うこの攻撃方法は、相手に動揺を与えるには十分な攻撃であったと言える。

少し下がった相手選手だったが、ペースを握られるのを恐れたのか、距離を取られないように、すかさず距離を詰めた。だが、ヒサジは相手の土俵でもある至近距離戦を受けいれ、その距離での攻防を受け入れた。

「確かヒサジのスタイルは、アウトボクシングだったよな。何でインファイトが得意な相手に、距離を取らないで戦う…」

ハヤトは、目の前での乱打戦を見ながら、不思議に思っていた。相手は単純な殴り合いで言えば、国内ではトップクラスだ。タフだし、パンチもあるこの選手は、ケンカボクシングのスタイルでここまで勝ち上がった選手。

この戦い方は、ヒサジにとっては明らかに不利なのだ。