神への挑戦

ヒサジの様子を見る限り、余裕を見せている感じでは決してない。だが、傍目に見ればリーチが長い分、ヒサジが手を出せるチャンスはいくらでもあったかの様に見える。

なのに手を出さない…。

「さっぱり解らないな。次のラウンドも何もしないようなら、文句言いに行くか」

ハヤトは、ヒサジの考えが読めず、少し苛立った様子を見せていた。そして、何気なくサヨの方に視線を向けると、サヨの表情に変化が起きかけていた。

「サヨちゃん?」






「どうだいヒサジ?相手の感想は」

「強いな。足はないが、プレッシャーのかけ方が抜群にうまい…思っていた通りの選手だよ」

ヒサジのコーナーサイド。コーチらしい人物とヒサジは、戦況を読み、作戦を練っていた。だが、そのコーチと言うのが…。

「ヒデはどう思う?俺は、次のラウンドでやろうと思うんだが…」

「良いんじゃないか。相手もそろそろイラついているだろうし、ここいらで勝負をかけてもいいだろうな」

中学生の同級生でもある、ヒデであった。勝負をかける…やはりヒサジには目的があり、手を出さなかった様だ。

「サヨちゃんが見てる前で、血を見せる訳にはいかないからね。バッティングにだけは気をつけるんだよ」

「解ってるさ。その為の下準備だからよ…」

「ふふっ、そうだね」

ヒデとヒサジが話していると、リングアナのコールが聞こえ、セコンドアウトを宣言された。ヒサジは腰を上げ、ステップを確認すると、表情をさきほどのものとは変え、鬼気迫る表情に変える…。

「見せてあげなよ…才能ってやつをさ」

ヒデはこれから起こるであろう事を考え、人知れず笑みを浮かべた。