そんな中、銀次は迷うことなく、その先を予測し答えた。

「…洗脳だな。対して知りもしない人間を、神だと崇拝させる経緯や、自分の人生を犠牲にさせるほどの行為をさせる所業。なおかつ、恐怖のみを消し、特定の行動をさせる経緯などなど、完璧な洗脳だな。それこそゲームみたいに、自分の思い通りに事を運んでいる感じだ」

刑事は苦虫を噛んだ様な表情で、銀次の話を聞いていた。

「ムカつく話だ。まだ税金も払っていないようなガキのする事じゃねぇ…もしお前の言っている奴等が、犯人なら…もう日本は終わりだな」

刑事は、加えていた禁煙パイポをしまうと、内ポケットから煙草を取り出した。そして、一本タバコを取り出すと、口にくわえ、その様子を見ていた銀次が自分の持っていたライターで刑事のタバコに火を着けていた…。

「それもどうかな…元々、この国はもう終わっているのかもしれないぜ。腐った連中が、あまりにも多すぎる」

長く生きれば、素晴らしい人間と比例して、腐った人間もたくさん見る事になる。そしてその巡り合う頻度も、職業によって様々だ。

そして、運が悪い事に、銀次もこの刑事も両極端な人間をたくさん見てきた人間だった。

「…俺は、お前の追っている睡蓮会の事は何も知らないから解らんが、何をしている奴等なんだ?極道か何かか?」

刑事は、銀次の話し方を見て、何かを感じたらしく、先ほど聞いた、睡蓮会の事を聞いていた。

「それは知らない方が良いぜ。おやっさんも、人の子を持つ親だろ?危険な事にあまり首を突っ込まない方が良い…普通に刑事をしていたら、関わる事なんて絶対ないからよ」

銀次は刑事の問いには答えず、話をはぐらかした。刑事は、そんな銀次の様子を見て、一度舌打ちをすると、吸いかけのタバコを屋上に置いてあるバケツに捨て、屋上の出口の方に歩いて行く…。

「取りあえずあのガキの事は俺に任せとけ。絶対に社会復帰させてみせるからよ…それと銀次っ!あまり危ない事に首を突っ込み過ぎるなよ。俺はこれ以上、『息子達』を無くしたくねぇからよ」