「よく言ったな、まさにその通りだぜ。…あの兄弟、悪ぶってるくせして人が良すぎんだよなぁ。

火事ん時も、当麻の兄貴がオレの罪かぶってさ…」

あ…それ、聞きたかった。

そしたら天ちゃん先輩は、私のそんな表情を見破った。





「…月からどこまで聞いてんの?興味津々な顔してらぁ」

「いえ…ちょこっとだけ…。火事の後、浮気して…彼女に学校の校舎から突き落とされたとか」

「ハハ。全部聞いてんじゃん」

「いきさつだけで…詳しい事までは」

「…へぇ。話、長くなるぜ。聞きたいの?」

天ちゃん先輩は、私にジャケットをかけ直してくれる。





「…まぁ。それなりには」

天ちゃん先輩を見上げながら私が言うと、

彼はニッと笑った。




抜けた歯で笑われると…

今まではすごく怖く見えてた。



でも今は、

なぜか、おどけた顔に見えたんだ。