「こんなボロい店だけどさ、馴染みの客が多いんだよな。みんな…爺さんの味を楽しみにここにやって来んだ」

「また来たくなるのも分かる…。だってすごく美味しいもん」

「だろ?」

当麻くん、まるで自分が入れたみたいに嬉しそう。

なぁんか、ますますカワイイぞ。



そんなやり取りをしていると、お客さんが店内に入ってくる。

常連さんだったらしく、お爺さんは私たちを置いて、テーブル席の方へ歩いて行った。

「ここ、当麻くんのおうちじゃないんだね。さっきお爺さんに聞いた」

「そ。普通に爺さんち」

お店の二階がお爺さんのお家で、部屋はいくつかあるけど、そこに一人で住んでいるらしい。

「当麻くん、いつからバイトしてるの?」

「昔からちょくちょく手伝ってはいんだけどさ、爺さん最近あんま具合良くないらしくて。くたばる前に、爺さんの味盗んどかね~とって焦ったワケ」

当麻くんはカウンター越しに私の前に腰掛ける。