声はすでに美幾のものではなかった。志保は生唾を飲み込んで心を落ち着かせる為に深呼吸をした。
「私は…死なない。」
志保は強い口調で言った。しかし、美幾は不気味な笑い声をあげる。
『私が…誰だか解る?』
「美幾…でしょ。」
志保は振り向く事なく答えた。
『フフフフ…。遺書は書いておいたわ。』
言われて志保は涙を流した。
急に身体が柵からはみ出した。志保は柵を握り絞めた。
「やめて、美幾。」
志保は叫んだ。しかし、身体がふわりと宙に浮いた。そして、自分を落とす正体がようやく見れた。
自分を屋上から落とすのは…
「侑……菜……。」
と志保は最期にそっと呟くように言った。
志保を落としたのは侑菜だった。美幾のフリをして志保を苦しめて追い詰めて殺したのは侑菜だった。
志保の瞳に最期に映ったのは侑菜の勝ち誇った顔だった。



