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「ただいま、お兄ちゃん。居ないの?」


 楠木(くすのき まなみ)愛未は一緒に暮らしている八歳上の兄に声をかけた。
 しかし、兄からの反応は無い。


「お兄ちゃん、お通夜に行きたいから送ってくれる?」


 愛未は兄の部屋のドア越しに声をかけた。


「わかった。一人で行く。」


 そう言ってドアから離れたときだった。


「一人では行かせないぞ!」


 とドアを思いきり強く開けて兄が言いながら出て来た。


「お兄ちゃん!居るなら返事くらいしてよ!」


 愛未は急に出て来た兄に驚いてそう言った。


「ごめん、ごめん。ちょっと調べ物があってさ。」