「<彩禾……おいで……。>」
彩禾は、後ろを振り向いた。すると、暗いホームに青白い影が見える。
ゆっくりと、ホームの床を滑るように移動していた。
「あっ……。」
何も、言えなかった……。言えるはずがなかった。
「<忘れられるか……
この怨み。
忘れられるか……
この哀しみ。
忘れられるか……
この虚しさ。>」
呪いを呟きながらソレは、やって来る。彩禾の魂(いのち)は、“ソレ”に握られている…状況は、何ひとつ変わっていなかった。
「侑……菜…。」
彩禾は、泣き続けていた。しかし、そんなモノに憎しみに燃える侑菜が情けをかける気がある訳がない。
<許しはしないよ…。お前もね。>



