「……っ、ふっ」
口から息がこぼれる。
隣いる彼は、わけわからずだと言った様子。
私だってよく分からない。でも、なんだか無性に。
「ふ……、ハッ。ハハ」
おかしかった。
笑う。楽しいのか、面白いのか。
時間の感覚が狂うほど、歩いた自分。それはあることをさしていて。
「私って、本当に狭い世界にいたんですね」
広い世界を歩いていただけで、“楽しい”と思ってしまった。
楽しいから時間が早く感じてしまうあの不思議な現象。
今まさにそれを感じて、そのことを知らされたのは彼のロマンチックなセリフから。
昼前から十一時も森の獣道を歩きっぱなしでは、そりゃあ彼だって気を使って話してもこない。


