治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん



「あれ……」


黒水晶をまじまじと見て、あることに気付いた。


揺らめいた。
炎のように、中がかすかに揺らめいたのだ。


てっきり、表面上が黒く染まったのかと思ったけど、中身が黒いらしい。腐っても水晶か、透明な玉の中にある黒い霧。


もっとじっくり見ようと思っていたら――辺りが真っ暗になった。


見ていた水晶の中に入ったかのような錯覚さえ覚えるほど唐突に。


足が地についていたり、噴水の音からそんなことはないと分かったけど。


「い、いきなり何が」


「月を消しただけだ。ついで、城の灯りもかな。光がなければ暗くなるのは当たり前だからね。怖い?」


「い、いえ、怖くはないですけど。月って消えるものでしたっけ」


「“ここ”のは消える。ババアの命令あれば、月とて逆らえないよ。

怖くないと言いながら、声がふるえているみたいだけど。戸惑いからの怖さなら、ほら、水の音でも聞いてなよ」