治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん



(四)


「おかしい……」


そう私が独り言をぼやいたのは、昼時の話しだった。


「本当におかしいね」


独り言のつもりでも、私の言葉が耳に入った彼も同じことを言ってくる。


外は快晴。
気持ちいいぐらいの日差しはいつものこと。


こんな日は診療以外でも遊びにくる人がいるというのに。


「なにか、あったんでしょうか。朝から誰も来ないだなんて」


朝の五時から待っているのに誰一人として来なかった。


いや、誰も病気や怪我してないは幸いだけど。


おじいちゃん、おばあちゃんが多い村じゃ必ず誰かが具合悪いと朝四時起きでここにくるのに。


「ちょっと、村に行ってきますっ」


「考えすぎだよ、ユリウス。こんな日もあるさ」


「ないですよ。十九年間……いえ、赤ちゃん時の記憶はないですが。私が物心ついた時からここは毎日人がくる、それはもー、みなさんに愛されている診療所で」