治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん



言われた単語で、夢うつつの脳にイメージが形づく。


どれもが想像の中の代物。きっと、現実で見れば凄い光景なんだろう。


何せ、彼に言われるまで“想像”もしたことなかった。


「夜空に、に、じ……?」


「ああ。一面に虹――七色の帯が夜によく生えて綺麗だったよ」


頭を撫でられる。
あやされているみたいで気持ち良かった。


猫の気分を味わっているのかもしれない。


「でもね、綺麗でも俺を満たしてはくれなかった。なんだってそう。俺は君より広い世界を見ても、満たされることなんかない。

幸せだと感じたことはなかった」


撫でる手が止まる。
何かを考えるように間を置いた彼。


「昼間、君は狭い世界でも幸せといった。それで考えたことがあってね。広い世界を見続けても幸せと思えない俺と狭い世界で幸せと言う君。一体どちらが“本当に幸せだったのだろう”って」