治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん



うとうともしてきたというのに。


「昼間の話、覚えている?」


彼は私を寝かせてはくれないらしい。


うすらぼんやりと、昼間のことを思い出す。


「ビーズさん、大丈夫かな」


「真っ先にあいつのこと思い出すのか、君は。……明日、墓石が一つ増えるな」


「冗談ですよ。昼間といっても、色々あったじゃないですか」


「広い世界の話しについて」


「ああ……」


意識が落ちていく。
話しかけるのは彼だけど、その声がいけなかった。


落ち着くテノール。
優しい子守歌でも聞かされている気分だ。


「俺はね、これでも色んな場所を見てきた。北には夜空に浮かぶ虹。東には一面砂しかない熱い地域。西には科学が発展した都市。南には動物しかいないここより深い森(緑)の中」