大きな街にいけば、彼と離れられる手がかりだってあるかもしれない。
私の世界は狭いんだ。
――でも。
「私はここが気に入っています。狭い世界でも、居心地がいいなら私はいたい」
「もったいない生き方だねぇ。ユリウスは若いんだから、もっと色んなものを見ればいいのに」
大きなお世話です、と結局私は最後まで彼と目を合わせなかった。
悟られたくなかった。
本音を。
見てみたいと思うこの深層の心根を。
「……、誰かきたみたいだよ」
扉先を見る彼、言った通りに出てきたのは村長だった。
ひげが似合う優しいおじいさん。彼に追い返されずに、こんにちはと挨拶をされた。
この穏やかな時間。
ああやっぱりここがいいと、私は開き直って挨拶を返した。


