治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん



「君が言ったところであのババアが魔導書をくれるはずがない。もちろん、アリスの言葉あってもだ。

完璧な無駄足だよ、それは。“世界の終焉たる災厄”に会うという危険な無駄足だ」


「ラグナ様は怖くないよ。怖いのはお兄ちゃんだけ。いっしょうけんめー、お願いすればいいんだよ」


「前提を持って話をするな、アリス。彼女がその気になったらどうする。お願いしても駄目なことは駄目と、本人から言われればそれでおしまいなんだ。

良いか悪いか決めるのは他人次第のお願いで、絶対など存在しない」


彼に言われて、アリスが口を閉じる。


言われたことに思う節があったのか、先生に怒られた生徒のように俯いて反論はしない。


ただ、私にとっては。


「絶対がないということは、絶対があるというのと同義語ですよ」


アリスに助け舟を出すように彼に反論した。