治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん



「……。離れられるなら、離れたいですよ。けど、このままの生活を続けなきゃ」


声が沈む。
離れる方法を探そうにも、私の行動範囲は限定されてしまう。


「私がいなかったら……、誰が村のみんなを治すんですか」


「ユリウス……」


同情のような名前呼び。

その主をあえて見ずに、包帯とガーゼを用意した。


誰かくればいいけどと外を見れば、綺麗な森の景色。


見慣れた景色は、それだけ私がここにいるということ。


「小さな世界で君は生きたいのか。広い世界に行けて、見れる目も持っているのに」


嫌な部分をつかれる。

小さな世界、私の知る世界はレルムの村とこの家だけ。


海も見たことがなく、山だってない。

どれもが本の知識でしか知らない世界たち。