お金が欲しい、宝石が欲しい、美味なる食事を、我を喜ばすための玩具を、我だけに遣える屈服者を。
などなど、人間ならそんな欲を持っているだろう。
欲を持ってもしないのは、出来ないからだ。
それらが出来るというのにあえてしないとは。
「シブリールさんって、無欲だったんですか……」
「だいぶ、ひっかかりを感じる言い方だね……。無欲とは違うな、本気で興味がなかった。ババアの監視がなくとも俺は別に何もしなかっただろうね。
興味あったのは、この俺の力自身。魔術についての探求心というか。“どこまで出来るのだろうか”と、日々色々な英知を頭に埋め込んできた」
「英知……、それでアフロディーテの称号を持っていたんですか」
「貰ったんだ、それは。アフロディーテを持つのはババアだった。
三年ほど前に、俺の成長に面白みを感じた奴が、気まぐれで俺にアフロディーテを与えた」
「面白み……?」
「この役者はどこまで我を楽しませるのかと、自分の力の欠片を俺に渡した。それがアフロディーテの銘。それと共に譲渡された、いや、その銘を持つ者しか持てない、この世界のありとあやる英知がのった魔導書を」
「それって……!」


