治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん



「ユリウス、それは恐怖による統一だ。人間、誰もに意思があり、相容れる者と相容れぬ者が存在する。一個体として。

争わない世界が出来るかもしれないが、たった一人の恐怖に支配される世界にあるのは不満。

いつかは崩れる。恐怖あっても、人は強欲だから。ちょっとしたきっかけで、身のうちにたまった不満を辺りにぶちまける。

まあ、何だかんだ言う前にあの女は人間に関わるつもりが毛頭ない。人間はあの女にとって、世界という舞台にたまたま立っていた“役者”。

あの女が達観者というのはここから来ている。役者の生き方(芝居)を見て笑う舞台(場)の主催者は、決して役者にはならない。

主催者にとって一番大事なのは、“舞台”でしかないからね」


机にあった彼の手が引かれる。腕組みを軽くして、最悪な女だよと付け足していた。