彼が書いた円は私たちの世界をさしているのだろう。
だいたいのイメージがついてきた。
「ラグナロクっていい人なんですね」
「いい人、ね……。俺にはそうは思えないが、世界の守護者としてのイメージしかないのなら、そう見えるか。
なら、悪いイメージでも植え付けようか」
「ラグナ様は優しいもん。お兄ちゃんは怖いのに、ラグナ様は優しい」
「低脳な言葉を出さない方がいいぞ、自分のためにな。俺から言わせれば、あの女はただの“達観者”だ。
世界の守護者といっても、“人間の守護者”ではないから、治安とか秩序とかは人間に任せっきりだ。あちらこちらで戦争とか紛争が起きようとも何もしない。
千の人間が虐殺されようが、“世界は終わらない”からな。
街一つを砂漠にする者を集めているとさっき言ったが、人間のためではなく、ただ単にそれは世界(大地)が消滅するから。砂漠しかない世界は地中深くからひびわれ、崩れて、崩壊し、消滅する。
人間たちがする街一つを奪うがための戦争などとは比べものにはならない、破壊ではなく破滅の域に達するおそれがある時にババアは動く。
それ以外では涼しげな顔で、人間が死ぬさまを見届けるだけの存在だ」


