治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん



「ババアの真意は知らない。が、俺なりの予想ではあの女は、この世界を“管理”している」


人差し指が机を二度ほど叩く。


「世界の破滅を回避するためが存在、それが管理者。だから、世界そのものを壊すおそれがある奴をあの女は集め、“管理”している。

魔術にはそれこそ、指一本と数分の詠唱で街一つを砂漠にするものもある。それを繰り返しやっていれば、世界は破滅するだろう?そのことを回避するために、あの女は“それほどのことが出来る奴”を管理する。


皮肉なことだ。“世界の終焉たる災厄”が、“世界の守護者”とは」


彼の指が円を書いた。

円を書いた後に、その中心を指差す。


「世界はね、無数にあるんだ。動物だけの世界、死者だけの世界。悪魔や天使の世界などなど。

アリスが使う召喚がその証明。この世界では無いモノを出現させる術。

無いものは、どうあったって“無いんだ”。しかしてそれは、この世界だからこそ。

この世界にいないならば、余所からもってくればいい。

この世界の場合は人間が主を占め、いる動物もDランクの知能が低いものばかり。人間の世界だろうな、言うなれば」