「分かりますよ、シブリールさん」
名前を強調して答えてみれば、彼は安心しきったように表情を崩していた。
だったらいいんだ。
と、まるで、私の記憶はそれだけでいいとも断定されたように言われてしまった。
相変わらず、おかしな人。変態だと思っていれば、――私に抱きつくアリスちゃんが、ひょこっと彼に赤い目を向けた。
「………」
「……………」
沈黙だけど、二人の間でやり取りがあった。
見つめられたシブリールさんがあからさまに不機嫌な顔をし、その顔に怖がったアリスちゃんがまた私の胸元に顔をうずくませる。
よしよしぃ、とこちらは獅子に睨まれた子猫をあやすようでいい気分をしているわけだが。
「な、ユリウス……!俺にもそんなことしてくれないのにっ」
「こんなことを求める成人男性(あなた)がいることにどん引きですよ」


