治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん



元気がないという感じ。笑顔がなくて、彼は私を見るなりどこか居心地が悪そうだった。


「ユリウス、体の調子はどう?」


「あ、はい。大丈夫ですけど」


「体の部位で動かない箇所とかない?」


「はあ、まあ……」


「だったら、“忘れてしまったこと”とかはないか?」


よく分からない質問をされた。


「忘れてしまったことって……、忘れたら、『忘れたんだ』と分からないじゃないですか」


言えば、彼がそうだね。と、寂しげに言ってくる。


「だったら、質問を変えよう。ユリウス、俺のこと“分かる”?」


変えられた質問のくせして、余計に変な言葉になっていた。


当たり前だ、忘れようにも忘れられないし、切り離せないぐらいの関係となる人を忘れたなどは言えない。