治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん



そうして、終わらせるための準備に取りかかる。


人差し指と中指を立てて、儀式に使われるタガーの代用品たる指先で術行使たる呪詞を書く。


これは彼なりの“道”であった。


【管理者よ、貴様が下僕らが我らの世界を侵している】


“道の先”からは腐臭がする。こんな付け焼き刃の冥界とは比べられないほどの、“本場の腐臭”だった。


アリスに群れていた屍たちが一斉に彼らに向いた。


腐った声帯を震わせて、潰れたカエルのような響きが木霊する。


“いやだ”


そう怖さを象徴する腐れかけたち。


それを知りながらもあざ笑い、彼は声を出し続けた。


【これは冥界の浸食と受け取ろうぞ。世界不可侵の決まりを忘れたか、管理者よ。裁かれたくないならば、もとの場所に連れて行け】