治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん



それでもあまり時間はかけていられなかった。


的確な単語だけを出し、必要最低限の詠唱で済ませて現実へと幻想を出す。


耳にはアリスの泣き声と、自分の声。


頭で想像し、声に出す。耳から入る己が声で、頭の中の想像をより鮮明に。


繰り返される循環はやがてれっきとしたカタチを残し、現実でそれが起こるようにと変換を開始する。


現実を壊して、己の世界へ。


「……………」


沈黙した彼が意味するのは終了したということ。


一見すれば、ただ彼女が眠っただけで別段何の変わりがない光景だが。



「…………、クッ」



その変化に気づくのはシブリールのみ。


眠る彼女の頬を愛おしそうになぞり。


「すぐに終わらせてあげるからね」


猫なで声のように甘い声で彼女に語りかけた。