治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん



(三)


そうして、パタリと力がなくなった彼女を、彼は抱きしめた。


【我が主。絆の反転。其の意識を呑み込み、全ての血潮は我が懐に。

剥奪、隔離、定着。
強奪、略奪、奪取。

其の命は我と同一。一心同体たる原子の主を我に。

強制、有無は言わさぬ。有無はならず、成立もなし。

繰り返す、強制。循環を右から左へ。

再び還す、強制。二心の輪廻を一つの線に】



呟かれる魔の音色。


現実に、己が頭の世界を持ち出す魔術において詠唱が長ければ長いほど、より確立した幻想行使が可能となる。


二節でも火炎を出せるシブリールにとって現実浸食というのは造作もないが、これは規格外。


詠唱――頭のイメージを鮮明にするための声出しは、言葉がいくつあっても足らぬほど。