進む足に迷いはない。
かけようとも出来る決意さえも出てきたところで――彼が私の前に出た。
向き合う状態で、彼がこちらの眼差しをじっと見る。
「答えて、ユリウス。本当に自分が犠牲になってもいいんだね」
「はい」
即答。
答えを聞いた後に、こちらの深層を見るかのように見つめられる。
やがて。
「怖がっているくせに……、どうして君は……」
前髪をかきあげて苦悩するかのように彼は。
「神様のような善良と万能なんかない、普通の人間で。亡者のように痛みに対する恐れが消えているわけでもないのに……。
どうして君の意志は一つしかないんだ」
「シブリールさん……」
声をかければ、彼は手を下ろして深く息を吐いた。


