「それに、そんな汚さが当たり前の世界を語るあなた自身も、私と同じ可笑しな人ですよ。
シブリールさんは、私(他人)を大切にしてくれるじゃないですか」
「………」
長い沈黙。
けど、何かを思いつめるような雰囲気は背中から伝わった。
「多分、あそこにいるのが私だったら、あなたは絶対に今の私と同じことをしている。
命の天秤、生死の覚悟、死に向かう戸惑い。そんなものはきっと持ってなくて、ただあるのは“助けたい”という無我夢中な思いだけ。
同じなんですよ私は、私を救ってくれる“あなた”とね」
「ユリウス……」
「止めなど通用しない。あなたもどうせ“止まらない”でしょう。私が今にも屍たちに食われそうになっているならば。
私はそれがアリスちゃんとなる。アリスちゃんに限らずきっと、誰もがあそこにいたら行くでしょう。
自分自身より大切なものはない。それでも、“守らなきゃいけないモノ”はいくつもあるのだから」


