治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん



一歩足を出す。
彼の止めは入らない。


「自分自身以上に大切なものなど、存在なんかしない。それもまた正論ですが、間違っている。

大切と思うが以前に、“助けたい”という気持ちが前に出てしまったのですよ私は。

泣いているアリスちゃんがいる。理由はそれだけ。目の前で殺されそうな女の子がいる。動機はそれだけ。

人を救う時、わざわざ自分の命と他人の命を天秤にかけるような真似はしない。

だって、そんな“暇もない”じゃないですか。

自分の命の大切さを知っているなら、他人の命の大切さも知っているんだから」


目指すは屍の群生。
どう助けるなんか考えていない。


ただ、アリスちゃんを救いたいという気持ちだけで動く体に、細かな策など持ち合わせていなかった。