治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん



返して下さいと手を伸ばしても、長身が手を伸ばせば届かない。


ギリギリ、爪先ぐらいの距離だから余計にイラつく。


「精神系の魔術、ね。見るのはいいが、こんなどこの本屋にもあるやつ見ても俺のは“解読”出来ないよ。不可能、無理、無駄。俺たちの愛を破れるものなんかないんだから」


本を持つ指先がマッチでもするようにこすられ、


「ちょっ……!」


燃えた。

炎から炭と化した本は床上へ。


ああー、と思っても時すでに遅しだ。


「何も、燃やさなくたっていいじゃないですか」


「必要ないものを消して何がいけない。在るだけ無駄だよ」


「そんなの他人(わたしたち)が決めることじゃありません。在るからには何かしらの意味が宿っているんですから」