「ちょっと、シブリールさ……」
「入るなり、ユーリちゃん、だと。くっ、見え見えなんだよ。ユリウスに気があるというのがな。おぞましい、お前みたいな勘違い男が彼女の名前呼ぶだけで厳罰ものなのに、ちゃん付けにして。処刑確定だな」
「勘違い男はあなたです。ビーズさんどうしましたか」
「あ、いや。昨日、ぶつけた腕がまだ痛いからユーリちゃんに看てもらいたくて」
「まだ呼ぶか。そう、そうか。そんなにも死に急ぎたいのだな」
「ユーリちゃんと呼ぶかたの方が私は好きです。ユリウスなんて本名、男みたいで嫌いなんですよね。――あ、ビーズさん。こちらの人は気にせず、どうぞこちらへ、って!」
いつの間にか、黒い槍を精製した彼には驚愕した。
零から一を作る“メイカー”は魔術の一つだが。
二メートルはある槍。ただの黒い棘にも見えるその棒を。
「五秒待つ、うせろ」
ビーズさんに向けやがったよ、この人は。
五秒どころか、一秒で逃げてしまうビーズさん。待ってとも言えずに、あげた手を下げる。


