治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん



「いえ、冬から春になった今は風邪引きやすい時期なんですよ」


「ああ、体の温度調整がまだ鈍いからね」


「はい。ついで、種まきだとはりきる人たちばかりなんで、疲労で免疫も落ちていくんじゃないかなぁって。念のためですよ」


「良いことだね、さすがユリウス」


いい子いい子と撫でる筋張った手をすり棒で叩きそうになる前。


「すみません、ユーリちゃんいますか」


来訪者。
村で力自慢のビーズさん。

ここに来るからにはどこか害したのだろう。


すぐに治さなきゃとビーズさんを出迎え。


「どの面さげてきた、このブサ男が」


――最悪の出迎えになってしまった。

私の前に立って、ビーズさんと対峙したのは彼。


爽やかさは風に流れたか、今あるのは威圧的な態度だ。