「来栖(くるす)です」

 名乗った張りのある声に、やはり的中したと葛城は額に手を当てながら入室を許可した。


 静かに開いたドアから、白衣に身を包んだ男性が少し身を屈めて入ってくる。

 高身長の彼には、ほとんどのドアが体を伸ばしたまま入ることが出来ず、ここも例外ではない。


 葛城の視線が書類に注がれたままなのを見て、来栖は居心地悪そうに曖昧な笑みを浮かべた。

 そういう顔色を窺うような仕草が葛城は苦手なのだが、仕方ない。


 何故なら彼は、そういう『設定』をされているからだ。