ぱたんとドアの閉まる音に、来栖はびくっと体を震わせる。
うつむきがちな瞳には長い睫毛による影が映り込み、小刻みに揺れているのが葛城にもわかった。

 それは何かに怯えているかのようで、葛城は訝しそうにしつつも、来栖が口を開くのを静かに待っていた。


 どれくらいの時間が経ったろう。

 窓のないこの部屋では、時間の感覚は時計でしかわからない。
しかし時計を見る余裕のなかった葛城に、どのくらいの時が経ったかを知る術はなかった。

 随分経ったようでもあるし、ほんの刹那のようでもあった。
ただわかったのは、こんなときだというのに空腹を覚えたということだった。

 時計を見れば、午後3時。


 まだ口を開く様子のない来栖に、長丁場になりそうだと見切りをつけ、空腹を鎮めることにする。

「おやつにしましょうか」

 葛城の言葉に来栖は小さく反応を返し、ゆらりと体を動かした。