葛城の言葉にカインは、目に見えて不服そうにしたが、渋々と了承の意を示した。
来栖はそのカインの態度も、葛城の言葉さえわかっていないようだった。

 まるでそれよりも重大な何かに思考は全て囚われているかのように。


 葛城は小さく溜め息をつき、眼鏡をずりあげた。


「来栖も。いいわね?」

 名指しして漸く頷いた来栖に多少不満はあったものの、今は言及しないことにする。

 それよりも、この事態が他で起きないようにすることが先決だと思った。


 とりあえずカインを退室させ、来栖が来室した理由から聞くことにした。

 カインは今度もまた多少不満げだったが、何も言わずに葛城に一礼し、来栖にねめつい視線を送りながら部屋を出て行った。