あれから数年が経った。


 来栖が心血注いだバイオノイド・プロジェクトにて試作品が完成し、その試運転(テスト)を兼ねた能力測定などでは全て、人間同等の数値を叩き出した。


 容姿に至っては人間と見まごうほどであり、艶やかな黒髪も、透き通った白い肌も人間のそれであった。

 皮膚を傷付ければ血が流れ、骨折もする。しかし自己修復機能はほとんどなく、軽い切り傷程度ならば治るが、重いものだと手術が必要だった。
繊細な造りをしているバイオノイドは、サイバノイド以上にメンテナンスも頻繁に行う必要があった。


 バイオノイド・プロトタイプは『カイン』と名付けられ、すぐさま大々的にマスコミが取り上げられた。それにより、『カイン』の存在は全世界に知らしめられた。

全世界は喜びに沸いたが、サイバノイドである来栖の名前が出ることはなく、会社の名前だけが世間を闊歩した。だが、来栖は気にすることもなく通常通り研究に勤しんでいた。


 時々、あれから恒例となりつつある『おやつの時間』のために葛城の勤務室を訪れるが、特に会社からの待遇を言及することもなく、至って普通にしているように見えた。