判子が押されたのを確認し、来栖は丁寧に礼を言った。


 もしかしたら、『おやつの時間』なんて単なる口実だったのかもしれないと葛城の頭を過ったが、それはそれで別にいいと思った。

 これでもう用はないだろうと、上の会議にかける書類ケースへ無造作に投げ込む。


「失礼します」

 来栖が葛城の持つティーカップを下げようとトレイを差し出したが、葛城はそれを制し首を左右に振った。

「まだ残ってるから」

 たまには『おやつの時間』もいいかもしれない。そう思いながら。