ともすれば退屈な展開となる中で、読者と作品をつなぐのが柚木の存在なのだ。

柚木はよく、世間に対して悪態をつき、美女に対して鼻の下を伸ばす、どうしようもない己の生き方を自嘲する。

その中のひとつを引用しよう。

『加奈子がこの秋で十歳になることぐらい、俺だってちゃんと覚えている。ただ十歳の少女がなにを考え、人生においてどんな問題を抱えているかということになると、見当もつかない。(中略)父親としての俺の能力を見限ったからこそ知子は俺と別れて暮らす生活を選んだわけだし、俺自身知子のその判断は正しかったと確信している。加奈子だってたぶん、子供心にも両親の出した人道的な結論には、納得している』

知子は別れた奥さんで、加奈子は一人娘。

まったく、どうしようもない男である。

しかしこんな柚木がどこか憎めないのも事実。

実際、ついついページをめくってしまう。

美女たちとの掛け合いもオトナの雰囲気に満ちていい感じだ。