『今は足の代わりに頭を使って…』

という箇所を見てピンとくる人もいると思うが、この作品はアームチェア・デイテクティヴ…事件現場へ行かず、事件の話を聞いただけで事件の謎を解き明かす「安楽椅子探偵」ものである。

「殺された女はなぜか男物の下着をつけて死んでいた」

「地下鉄で見かけた男はなぜか手に二着の背広を持って時計を見ていた」

といった謎に対して、退職刑事は長い刑事生活で得た知識と経験を持って挑み、論理的な解釈を加えて解決してゆく。

作者の都築道夫は、本格派ミステリの第一人者。

『論理のアクロバット』なる言葉を唱え、読者を唸らせる数々の謎を生み出した。

この【退職刑事】は全6巻からなる短編集。

そのため「犯人は誰だろう?」というフーダニエットよりも、「なぜこんな事件が?」というハウダニエットを扱った話が多い。

現在は創元推理文庫より発売中。