先日TVドラマの新シリーズが始まった【臨場】も新宿鮫と同じタッチの警察小説だ。

光文社から出ている単行本には、八つの短編が収録されている。


【L県警本部ビル五階。刑事部捜査一課の警電44番が鳴ったのは昼を少し回っていた。】


↑これは第一話の冒頭文である。

警電44番という名称がいい。

リアリティたっぷりな物語が始まるぞという期待を持たせてくれる。

自分は民間協力員とか、捜査一課二係なんてフレーズを使っているが、どちらも造語だ(さりげなくカミングアウト)。

主人公の捜査一課調査官・倉石義男は槍のような細い体と鋭角な顔立ちを持つ。

その風貌に違わぬ無頼漢で、上司には疎まれているが、鑑識としての眼力はずば抜けている。

誰もが病死や自殺と思う案件を殺人と見破り、殺人と思われる見立てを事件性なしと覆してきた。

その生き方と、職人気質なたたずまいから、人は彼の事を「終身検視官」と呼ぶ。