由美ちゃんが言う通り、王子様を引き立てるための脚本なんだろう。クルクルと、王子様が一人で舞う。



 優雅に、気品高く。




 でも、堀木戸さん、足は大丈夫なの……?



「ここじゃ、よく見えないわね」


 由美ちゃんが舞台に目をやったまま、席を立って前に移動した。

 私も習って移動する。もちろん、舞台から目を離さないままに。



 舞っていた王子様が背を向けたところでピタリと止まり、下座に目を止める。



 シンデレラに気が付くシーンだ。






 胸が締め付けられる思いがした。




 ――あの先に居たかった。




 五年間、それを夢見てた――。








 そして王子様の手が、誰もいない"シンデレラの方"にゆっくり伸びる。




 空間に向かって、何かを求めるように。




 ためらいがちに一旦引っ込めた手を、また伸ばすと……。






 くるりと私に向いた。




 そう。客席を、ではなく私の方を向いた。