とりあえずホッとしてため息をもらす。

これが噂をすればってやつだな。

不意に孝允と目が合って、二人で笑った。


そう、学校にくればこうして雪村に会えるわけで、これからのオレの高校生活、何だか楽しくなりそうだ。


「……って、ちょっと待て!」

「どうした、慧吾?」


やべー!!

スルーするとこだった。

気付いてよかったのか、悪かったのか。

ふつふつと沸き上がるこの感情は、嫉妬ってやつなのか。


「お前、今……」

「ん?」


オレが言おうとしていることが分からないといった表情を浮かべる孝允は、次の瞬間には血の気が引いたように顔色を変えていた。


「雪村のこと、“舞”って呼んだだろ?」

「は? あっ……っと、気のせいだろ? あ、HR始まるからまたな」


すばやく逃げられ、オレはその場に呆然と立ち尽くす。


何なんだよ一体。

何なんだよーっ!!


「痛っ!! 何すんだ……」

突然衝撃をうけた頭を押さえながら、罵声をあげて振り返ると、


「ほー。教師に楯突くとはいい根性だな、なぁ、雨原?」


そこには担任が青筋たてて立っていた。

どうやらHRは始まっていたようで、首根っ子を掴まれたまま教室に連れ込まれ、もちろんクラスメイトの笑い者になったことは言うまでもなく。