%短編:侵された体%


ふいに、先輩が、あれ?と小さく首を傾けた。


「どうかしましたか?」


「いや、ゆりってさ、レバー嫌いじゃなかったっけ?

貧血で倒れた時、レバーを夕飯にされたって文句言ってなかった?」


「あぁ。あれ以来食べるようになったんですよ。

貧血で倒れるの、もうこりごりですから!」


「そっか。そうだよな」


先輩は、私の説明に素直に頷くと、

茶碗に残った最後の米粒を、器用に箸ですくいあげた。


「それで、体の方は、もう完全なのか?」


貧血の話をしたせいか、

先輩は揺れる瞳で私を見つめる。


「はい。もうお腹も痛まないし、体の方は大丈夫です。

でも、まだ精神的にちょっときついかな」


私は両手を握り締めて、目を伏せた。